N H K『あさイチ』プレミアムトーク(2025年10月17日放映)“伝説の同時通訳者 田中慶子”

2025年10月17日放送のNHK「あさイチ」プレミアムトークに、同時通訳者の田中慶子さんが登場しました。

田中さんは、日本を代表する同時通訳者であり、通訳コーチ・英語コミュニケーションの専門家としても活躍されています。国内外のさまざまな分野で通訳を担当し、これまでにダライ・ラマ14世、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デヴィッド・ベッカム、オードリー・タンなど、世界的著名人の通訳を務めた実績をお持ちです。

番組の中では、「毎日必死に勉強している」「常に大きなプレッシャーを感じている」といった言葉も語られ、通訳という仕事の厳しさに触れられていました。田中さんの仕事は、単に言葉を日本語に置き換えることではなく、話し手の意図や感情、間の取り方まで瞬時に読み取り、聞き手に自然に伝わる表現へと変換することにあります。彼女は「正確な翻訳よりも、聞いた人が同じ気持ちになれる表現を選ぶこと」を常に心がけているそうです。

たとえば、ジョークや感情的な発言は、直訳では温度やニュアンスが伝わりにくい場合があります。田中さんは、話し手の呼吸、表情、声の揺れを感じ取りながら、その場に最もふさわしい言葉を瞬時に紡ぐ――この「空気を訳す力」こそが、世界のVIPたちから厚く信頼される理由だと紹介されました。番組ではその一例として、以下の通訳場面が取り上げられました。

  • クライアントの実際の言葉:「いつもは質問したことないけど」
  • 田中さんの英訳(意訳):
     “彼はあなたと頻繁に話すことはほとんどないから、今この機会を逃したくないと思っているの。彼は本当にあなたに聞きたがっているのよ。”

また、AI時代の到来により、情報を正確に伝えるだけの通訳や翻訳は機械に代替されるかもしれないが、「思いを伝える」ことは今後も人間の通訳者にしかできない大切な仕事として残っていく――と、田中さんは視聴者からの質問に答えて語っていました。